CBR929RRは過小評価されているユーザーフレンドリーな大型SSバイクだ!
この記事は、ホンダから発売されていた大型スポーツバイク、CBR929RRについてのレビュー・インプレッション記事です。
こんにちは!杉浦かおる(@munenmusou_blog)です。
先日、大学の後輩たちと1泊2日で秩父や軽井沢を走ってきました。
その際、後輩の1人が乗っているCBR929RRと愛車を交換し、50キロほど市街地やワインディングを走行しました。
CBR929RRは2001年、2002年の2年間だけ販売されたホンダの「ファイアブレード」シリーズの1つ。
製造年月の短さに加え日本では逆輸入車としてしか手に入れられなかったこともあり、国内では珍車として扱われるバイクです。(後継モデルであるCBR954RRは割と人気でした)
リッタークラスで150馬力越えのSSに乗るのは始めてでしたが、実際に乗ってみると非常に乗りやすいうえ、まるで250ccのような回頭性能を持っていることが分かりました。
これは「隠れた名車」であると言うしかありません。
現代のカリカリなSSとは違う、牧歌的な、ユーザーフレンドリーな時代のスポーツバイクであると言えます。
故障が玉に瑕なものの、それさえクリアできれば女性や250ccからのステップアップとしてもいいのではないかと思うほど。
そんなわけで、今回はホンダ・CBR929RRのインプレッションについて、オーナーである後輩の意見を取り入れながら書いていきたいと思います。
攻めすぎていない見た目は好感が持てる
2000年代前半の攻めすぎていないスポーツバイクのデザインです。
最近のSSほど攻撃的ではくどことなく愛らしさが感じられます。
また、メーターはアナログのタコメーターとデジタルスピードメーターの複合式。
発売された年代を考えると先進的なのではないでしょうか。
足つき良好、装備重量200キロ弱で取り回しも簡単
CBR929RRのシート高は820mmと現代のSSと遜色ありませんが、実際にまたがってみると数値よりも低く感じます。
身長166センチで短足の自分が厚底ブーツで乗ってみると片足べったりで余裕があるほど。
ステップ位置が足の邪魔をしないこと、シート形状が足つきにいい影響をもたらしているのではないかと思います。
また、乾燥重量170キロと軽量。
今回のバイクはマフラーがアクラポビッチに換装されているので、装備重量はおそらく190キロ程度でしょう。
このため取り回しは400ccクラス並みで非常に楽です。
女性ライダーでも乗ることは可能でしょう。
ポジションはSSと思えないほど楽。
乗車姿勢は非常に楽です。
自分はTRX850に乗っていますが、それよりも楽といって良いほど。
ハンドルは前傾姿勢ですが、現在の大型SSとは比ぶるべくもないほど楽。
また、ステップ位置はネイキッドバイクといってもいいほど前よりかつ下に付いています。
このことからロングツーリングが非常に楽だと言えます。
SSというよりスポーツツアラーと言ってもいい乗車姿勢です。
YZF-R25など現代の250ccSSから乗り換えても違和感はないと思います。
実際に乗ってみての感想
ここからは、実際にバイクを借りて運転してみての感想をシチュエーションごとに書いていきます。
市街地走行は苦しくない
150馬力越えのSSということで市街地走行はエンジン特性からくる「急かされ感」があるのかと思いましたが、全くそんなことはなし。
スロットルを開けなくても半クラッチで発進可能なうえ、低回転から実用的なトルクを出すので60キロ未満であってもストレスはないというどころか快適でさえあります。
誤解を承知で言うのであれば回さなければスーフォアみたいな出力特性を持ったバイクです。
なお、「ドン付き」をこのバイクの弱点と挙げる他のレビューを見ましたが、自分はそれを感じませんでした。
おそらく私がTRX850というパラツインに乗っていること、マフラーがアクラポビッチに交換されていることが影響しているのかもしれません。
軽い車体と倒しこみの速さでワインディングが楽しい
CBR929RRの真骨頂はワインディングであると言えるでしょう。
現代のSSに比べて柔らかいフレームは低速・中速コーナーにおいて抜群の回頭性能を誇ります。
普通、このクラスのSSが得意なのは比較的広く緩いカーブが続く高速コーナーです。
一方、CBR929RRは山奥の県道のような1.5車線でキツいブラインドカーブみたいなところも得意です。
これは先述の低速から使えるエンジン特性に加え、抜群の倒しこみの軽さが影響しています。
下手な250SSよりもよく曲がり、以前乗っていたセロー並みのヒラヒラ感。
打ち足を出して身体をよじるようにするとS字カーブもモタード並みにスイスイ走れます。
CBR929RRはジムカーナに持ち込んでもかなりいいところまで走るのではないかと思います。
高速道路も問題なし
今回の試乗ではバイパスしか走りませんでしたが、高速道路なんてのは屁でもないでしょう。
新東名高速の120キロ区間なんか怖くもなんともないと思います。
ポジションも楽なので高速道路を延々と走り続けるシチュエーションでも疲れにくいと思います。
ちなみに外国人の動画を見るに最高速度は270キロぐらい出るようです。
可変バルブの面白さ
CBR929RRには可変バルブが搭載されており、大体4000回転ぐらいから作動します。
これが面白い。
音と加速感が変わるのが分かります。
ドッカンというわけではないのでコーナーでも安心です。
高速道路の合流で回すときなんかは嬉ションものです。
このバイクに搭載されているのはVTECではないものの、可変バルブのバイクや車にハマる人がいるのも理解できます。
CBR929RRの弱点
ここからはCBR929RRの弱点について書いていきます。
これらの問題から比較的短期間に後継モデルのCBR954RRに切り替わったうえ、逆輸入車とはいえ日本でマイナーバイク扱いされているのだと思いました。
壊れる
CBR929RRの最大の弱点、それは故障すること。
2000年前後のホンダ車の例にもれず、レギュレーターやジェネレーターなど電装系に持病を抱えています。
後輩のCBR929RRもジェネレーターの故障により一度不動になって部品交換をしたそうです。
Fi黎明期のバイクはCBR929RRに限らず電装が鬼門ですね。
故障がなければ自分もほしいぐらいですが…
部品が出ない
既に20年落ちのバイクとなっており、廃盤になっている部品も数多いとのこと。
壊れたレギュレーターも廃盤であり、ヤフオクで買ったとのことでした。(一応怪しいリプレイス品は売っているらしい)
夏は熱い
33℃のなか、CBR929RRを借り受け市街地走行をしたのですが、まあとにかく熱い!
フレームがエンジンの廃熱で暖まり、それが内ももを焦がすオーブントースター状態。
後輩によるといろいろなSSを試乗したが、これより熱いバイクはパニガーレぐらいだったとのこと。
アイドリングで発火しないだけCBR929RRの方がマシですが、真夏に乗るバイクではないと強く印象に残りました。
現代のリッターSSにはないフレンドリーさを残すバイク
100馬力を超えるSSに乗ったのは始めてだったのですが、特に怖い思いをせず運転できました。
車体の軽さのおかげで取り回しも良好なうえ、エンジン特性も市街地走行からワインディングまで耐える。なおかつポジションはロングツーリングでも楽。
思うにCBR929RRが発売された際はホモロゲーションモデルのVTR1000Fが発売されていたのでCBR929RRは公道走行に振ったモデルとして販売できたのでしょう。
CBR929RRは現代の「サーキット用を公道にリファインしました」みたいなSSではなく「公道が楽しいスポーツバイクを!」というコンセプトで開発されたのではないでしょうか。
CBR929RRはリッター級のSSというスペックからは考えられないユーザーフレンドリーなスポーツバイクであると感じました。
もちろん回せばすごいよ。