こいつは日本一周の相棒にしたい ヤマハ・トリシティレビュー
以前、私はレンタルバイクでしまなみ海道を2泊3日の日程で走破しました。
その時に私が選んだ相棒はヤマハ・トリシティ。
2日間で210キロをテントを積んだ状態で走行しましたので、簡単にレビューしていきたいと思います。
[toc]
外観
私が借りたトリシティはマイナーチェンジ前の物です。(EBJ-SE82J)
ライトはハロゲンに、LEDのポジションランプがついております。
ブレーキランプはLEDです。
当時トリシティの発売時、なんで「こんな先進的なバイクなのにヘッドライトをハロゲンにしたんだ?」と不思議に思った覚えがあります。特にPCXなんかはすでにフルLEDでしたからね。
前から見ると前輪が左右についていて違和感を覚えます。
走行時に前を走っていた後輩曰く、「フロントフォークの動きがキモい」とのことでしたが、スタイリングに関係するんでしょうかね。
ちなみに現行型はヘッドライトもLEDになっています。
収納
メットインは狭いです。
私の愛用ヘルメットである、OGK KABUTO の AVAND2 はいわゆるスポーツジェットヘルメット。
ヘルメットの中では特段大きい部類ではありません。
しかしながら、向きを色々試さないと蓋が閉まりませんでした。
あのアドレスV125Gですら、横向きにすればAVAND2が難なく収まったことを考えるとちょっとマイナスポイントかな。
私のAVAND2にはB+COMが取り付けられているとは言え、ちょっと小さいかも。
また、従来モデルはフロントポケットもなく、コンビニフックのみ。
フロントのギミックのせいで犠牲になっているのは分かりますが、利便性が求められるスクーターならペットボトルぐらいは差し込められるようになっているとよかったですね。
フットボード
他のトリシティのレビューを見ると必ず書かれているフロアボードの狭さ。
実際に乗ってみて、その理由が分かりました。
私の身長は165センチ、足は人から指摘されるレベルで短いです。
それでも、足回りに窮屈さを感じました。
スクーターは50ccだろうが、ほとんどアメリカンバイクのように足を前に投げ出せるようにできています。
トリシティはそれができない。
ビッグスクーターの教習では、足を前に投げ出した方が不整地でも踏ん張りやすくていいですよと教官に私は教わりました。
仮に、フットボードの横にえぐりこみを入れておけば多少変わったかもしれませんが、このバイクの足の窮屈さは、後述の安定感に基づく長距離巡行の快適性という非常に大きなメリットを損なうものとなっています。
しかしながら、この足回りの窮屈さ、フロントカウルが役に立っている部分はあります。
それは、雨が降っても足元が濡れないことです。
実は、ツーリングの3日目は1日中小雨が降り続いていたのですが、足元は全く濡れませんでした。
窮屈な分、また前面が覆われているのもあり、足が濡れないのは通勤時にも便利かもしれません。
足つき
先ほども申しました通り、私は165センチの短足です。
トリシティはシート高が780mm(現行は765mm)。
シート高としては高いわけではありません。
しかも、今回は底の薄いスリッポンで乗ってしまったので、大丈夫かなと思いましたが、そこまで足つきが悪いわけではありませんでした。
セローよりちょっと足つきが良いぐらいですね。
しかしながら、シートが幅広なので数値よりは足が付かないなあと思ってしまいました。
しかしながら、前輪2輪に伴って停車時も安定性が高く、片足つま先立ちでも全く怖くないバイクです。
身長が160センチあれば十分乗れるとは思いますよ。
走行性能
素晴らしい直進安定性
これはもうすごいです。
キャスター角も立っているのにハーレーのようにまっすぐ走ります。
私はフォルツァに以前乗っていましたが、それよりもよっぽど安定しています。
しまなみ海道の橋を渡るときに横風も受けましたが、そんなものに全く動じることもなく、恐怖も感じることもなく、まっすぐ走り続けるトリシティに頼もしさすら感じました。
倒しこみも軽快
先ほどの直進安定性がすごいという記事と矛盾しているように感じられますが、倒しこみも軽快なのです。
普通、直進安定性と運動性はトレードオフなのですが、これを高い次元で両立させています。
3輪でもヤマハハンドリングは健在です。
私、トリシティでカーブを始めて曲がった時、「設計の人はこの感触をめっちゃ研究したんだろうなあ」と思ってしまいました。
(知人に某メーカーのバイク設計者がいるのでなおさら感じます)
レンタルバイクなので攻めた走りはしませんでしたが、後輩曰く「試乗会でコーナー攻めたら簡単にマフラー擦りましたよ!」とのことです。後輩よ、試乗会で攻めるな。
荒れた道も強い
しまなみ海道は基本的には整備された道なのですが、漁港や舗装林道に迷い込むと荒れた路面やダートにも出くわしました。
しかしながらトリシティの前輪の安定感kら転倒の怖さは全くなく、安心して通過することができました。
スクーターなのでコブは越せないでしょうが通過することについては難なくこなせます。
年越し宗谷岬にトリシティが選ばれるのもなるほど納得できました。
加速
はっきり言って鈍重です。
12馬力に160キロという車重ですから、軽快性を求めること自体が間違っていますが。
出だしは50ccスクーターと大差ない感じですが、スピードに乗ってしまえば何ら問題ない感じですね。後半は伸びます。
アドレスV125に比べると物足りなさは多いですが、全く走らないわけではないので不満はあるもののまずまずだと言えます。
しかしながら、この車体でこの加速ですからストップアンドゴーの多い都会の市街地を通勤する用途としては最適解と言えなさそうです。
地方都市を片道10キロぐらい走って通勤するなら十分楽しそうだと思います。
燃費
2日間走行して燃費はリッター40キロというところでした。
この重さでこれだけ出せたなら大したものだと思います。
航続距離は250キロは稼げますね。
ただ、燃料キャップがメットインの中にあるタイプなのが残念です。
せっかく長距離走行に向いているスクーターなのにメットインを開けないと給油ができないのはもったいないです。
キャンプツーリングをする場合、リアシートにも荷物を積載するのは当たり前です。
給油をする際にシートバッグをいちいち荷ほどきしてシートを開ける手間を取らせるのは非常に大きなデメリットです。
何故、給油口を前側に置かなかったのかという疑問が残りました。
総論:日本一周するなら相棒にしたい
色々不満点はありましたが、こいつの最大の魅力である前輪が2つと、それに伴う直進安定性能は他のバイクには存在しません。
転ぶ気がしないです。
クラスを超えた安定性と荒地走破能力、125ccとは思えないどっしり感。
日本一周するなら相棒にしたいと思えるバイクです。
給油口の位置さえ変えてくれればもう購入するんだけどなあと思いました。
しかしながら、日本において原付は簡易な移動手段。
アドレスのような安くて、小さくてすばっしこいスクーターが求められています。
トリシティのガタイでは通勤快速・ご近所買い出し用に小型軽量なスクーターを好む日本ではなかなか主流になれなそうな感じがしました。
平日の通勤と休日のツーリングを両方こなす万能機であると感じます。地方都市に住んでいるバイク通勤おじさんであるならマストバイかと思います。
ヤマハは3輪のバイクをLWNと名付け、NIKENや現在開発中の250ccスポーツなど、スポーツバイクもその対象となっています。
安定感と、倒しこみの自然さ。
それを両立できているヤマハの技術力があれば、これからのLWNがますます発展していけるのは間違いないと思います。